やっとH2も最終巻です。あだち作品では一番の長編なんでしょね、H2って…
さて準決勝を翌日に控え、突然旅館から出かけようとする比呂。春華ちゃんにはもちろんその行き先が分かってるわけですが…
つーわけで比呂の行き先はもちろんひかりちゃん。
ひかり「とうとう…」
ひかり「想像できないなァ、負けたヒデちゃんは。」
比呂「当分は大丈夫だよ。4ヶ月前に何年分かの涙つかっちまったからな。」
ひかり「相談したいこといっぱいあったのになァ。きっとこれから、もっともっと増えていくのになァ。」
比呂「わかってる。」
ひかり「…口先だけでいいのね。」
さて旅館に帰ってきた比呂に対し、野田が大ボカやらかします。
野田「聞いたのか⁉ひかりちゃんから!」
これを比呂が知らなければまた違う展開もあったんでしょーがね、まぁ知っちまう方が試合は面白くなりますわな。つーわけでついに千川vs明和、比呂vs英雄の戦いが始まります!
野田「わざと英雄に打たせたりしたらただおかねえぞ。」
比呂「なんでおれがわざと打たせなきゃいけねえんだよ。」
英雄に対する宣戦布告なのか、それとも英雄に本気を出させるための挑発なのか…このあたりの比呂の心理状態は推し量りにくいですな。
さて1回裏、比呂は英雄から三振を奪いますが、これを野田がパスボール。結果的には…
つーわけで最初の対決は比呂の勝ち。
監督「橘。おまえが三振した最後の球はストレートだったのか?」
英雄「いえ。今まで見たことがない球でした。ただ、言葉は知ってます。」
まぁスライダーと高速スライダーの境界線は曖昧なところなんですが、一般にはその投手のストレートとの球速差が5~10km/h以内のスライダーが高速スライダーだということにはなっています。まぁ実際にはなかなかお目にかかれない魔球です。これは高速スライダーで間違いないわと思えるスライダーを投げてたのはランディ・ジョンソンくらいのもんかもしれんね…
つーわけで英雄が振り逃げだったのは野田が捕れなかったからです。
野田「ちょくちょく投げられたら試合にならなくなりますよ。」
さて先制点は仙川、その裏の守備に肩で息をしながらマウンドに立つ比呂に対し、英雄はゆっくりと時間を稼ぎます。
監督「男だねえ、橘英雄。」
はっきり言って塁に出ると選手は疲れます。だから投手は塁には出なくてもいい、むしろ出ないでくれという暗黙の雰囲気がプロにはあります。でもやっぱりバッティングも頑張ってる投手を見てるとファンとしては楽しいんですよ。近年の投手でいえばやはり桑田の名前がまず挙がるんでしょーが、桑田の生涯打撃成績は890打数192安打、打率.216、7本塁打。投手としては極めて良い数字ですが、やはり外国人にはかないません。2003年に広島に在籍してたブロックは投手のくせに代打でも使われるという変態投手でしたしね(笑)さらに巨人にいたガルベスの1997年の成績は65打数15安打3本塁打。仮にガルベスが野手として550打席ほど打ったとするとホームラン25本は打ってた計算になります(笑)んだけどもやはり最高にバッティングが良かった投手ってのはこの人で決まりでしょうよ!
バッテリーのサインは99.9%捕手が出します。理由は単純、投手がやるとバレやすいし無駄な体力を使うから。投手側からサインを出してたのは槇原くらいしかいないんじゃないですかね?槇原は目が悪くて捕手からのサインが見えづらかったからなんですけどね…
トレイ・ムーア!
下位打線の選手が出塁したら8番の藤本が送ってムーアで返すという不思議な現象が起こるほどムーアのバッティングは良かったです。どれくらい良かったのかというと2003年のオールスターファン投票結果を見ればよく分かります。あの年のオールスター、15万票を獲得したムーアはセ・リーグ投手部門9位だったんですが…問題なのはこの後です。
☆セ・リーグ「一塁手」部門
1位 桧山進二郎 12万票
2位 清原和博 10万票
3位 ムーア 4万票
これにはさすがに吹いたムーアは大谷みたく投手と野手の二刀流ってわけじゃないのにこの結果ですからね。この遊び心、他球団のファンには真似できまい…
まぁそーゆーわけで英雄のニクい心遣いに対し、比呂が投げたのは3球連続スローボール。
ちなみに。プロの世界では考えられないことなんですが、ノーサインで投げてた投手がいます。それはあの村田兆治。村田さんも目が悪くてサインと全然違う球をよく投げて捕手を困らせてたそうです。困った捕手の袴田選手はそれならもうノーサインにしちゃえと(笑)150km/hのストレートと切れ味鋭いフォークのコンビネーション、普通ならノーサインでは捕れないですよ。だけどその不可能を可能にしていたのは、たゆまぬ努力とバッテリー間に築かれた信頼やったんでしょうな…
さて明和の守備、英雄は守りでもファインプレー。
確かにそう言われることも多いですが、打力と守備力が共に高次元で共存していた野球選手ってのは2人だけだと俺は思ってます。もちろん1人はイチローですがもう1人は中村紀洋。巧打者で守備が一流という選手は多いけども、打力が怪物で守備も怪物レベルというとこの2人くらいですよ…
そんなこんなで1-0のまま進んでいく準決勝、この男の一発で試合が動きます。
比呂「どっちを選ぶと思う?ひかりが…だよ。」
野田「興味ねえよ。」
比呂「ウソつけ。」
最近は阿部慎之助を普通に見てるからなのか捕手にも打撃を期待しがちですが、現実には難しいんですよ。やはり捕手は守備面での負担が大きすぎます。日本プロ野球における野手のタイトルとしては最高打率・本塁打王・打点王・最多安打・盗塁王etcいろんなタイトルがあるわけで、それらのタイトルを一度でも獲得した経験のあるプロ野球選手の数はのべ300人くらいになるんでしょーが、ポジション別に見てみると捕手で打撃タイトルを獲得したのはたった6人だけですから。捕手をしつつ打つっていうのはそれだけ難しいことなんですよ。吉永や小笠原、それに中日の和田なんかは元々捕手だったけど、バッティングを活かすためにコンバートされた経緯から見てもやっぱ捕手と打撃の両立は大変なんですよね…