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きよの漫画考察日記2103 からくりサーカス第43巻 前編

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ちょっと入りきらないので前編、中編、後編に分割しま〜す。{EF65B745-7324-436A-B368-821DA17A1CAB}
ついにからくりサーカス最終巻。この3人の笑顔に辿り着くためには43巻もの長い道程が必要だったんですよ…

カナヘイピスケ

さてまずは勝vsカピタン。そこはさすがに最後の四人とゆーことでカピタンが優勢です。
カピタン「泣くがいい!泣いて我が足にすがりつけば命は助けてやってもよいぞ!」
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「でも…もう…泣かない…泣いてたら…誰も助けられないから…」
カピタン「泣かないというだけで勝つつもりか。」
「…だから今は泣くべきじゃない。」
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もちろん第3巻で鳴海が勝に遺した言葉です。ちょっとあの時のシーンを思い出してみましょう。
鳴海「何かあったら心で考えろ…今はどうするべきか…ってな。」
{32279676-AFC7-4F60-AC5A-D02646A56DEA}だから勝は自分の心で考えて辿り着いたわけですよ。泣いてたら誰も救えない、だから今は笑うべき時だということにね…

つーわけで最後の激突。
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大人になってから読み返すと、これもまた深い言葉です。我々は何かあった時どうしても「頭」で考えてしまいがちですからね。心で考える、なるほどなぁ…

さて自分のありもしない過去の英雄譚ばかりを語るカピタンに対し…
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「今に生きてる人をがんじがらめにして、幸せを求める気まで奪っちゃうのは過去の糸だ!現在を生きるためには過去の糸にあやつられちゃダメなんだ!」
カピタン「こ…小僧、どこからそんな力を…そうか…お前は祖父の武芸を転送したのだったな…何が「過去を憎む」だ!お前は人間の過去、伝統の力で戦っているではないか!自分の言う伝統はそういう偉大なものだ!そして自分をほめたたえるためのものだ!」
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確かに「伝統」という言葉から連想するのは物であったり技術であったりすることが多いですな。脈々と受け継がれてきた心の姿勢こそが伝統…藤田和日郎は良いフレーズをホント生み出すなぁ…

それでも自身の過去と伝統を語り続けるカピタンを勝は一閃。
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鳴海はゾナハ病の子供達の想いを、死んでいったしろがね達の想いを敵にぶつけるのがその戦闘スタイルです。だから鳴海はその想いを乗せた拳で戦うわけです。これに対し勝は過去に縛られた人達を幸せにするために、彼らを縛り付ける過去の糸を断ち切るために戦う。だから勝の武器は刀であったり鎌であったりするわけです。藤田漫画は深く読めば読むほど奥深いわぁ…

さて一方、宇宙へと向かうシャトルを守るために孤軍奮闘する鳴海。さすがに多勢に無勢で劣勢に晒されますが…
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う〜ん、長かった。ここまでホントに長かった。この2人が互いに背中を預けて戦うことになるなんて、物語序盤の頃からは思いもよりませんでしたよね…

そんな勝の登場をモニターで見ていた一同。
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阿紫花さんの立場からすれば勝の姿を見るのは3巻以来の事です。そう考えると阿紫花さんは物語の最初期から勝・鳴海・エレオノールの3人と接点を持ち続けてきた人物ですからね、その意味ではギイに匹敵する重要キャラですよ…

さて自動人形を撃破した後、振り返った鳴海の網膜を焼くというとんでもない行為に出る勝(笑)
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ぶふぁ…ここで「えんとつそうじ」かよ…
おそらくからくりサーカスを一度読んだだけの読者ではピンとこないでしょうね。からくりサーカス第7巻で仲町サーカスが演じた人形劇、あの時の主人公の名前が「えんとつそうじ」だったんです。あの時の劇は悪者にさらわれたお姫様を救い出したえんとつそうじがそのまま去って行くというありふれた内容だったんですが、ここでその名前が出てくるとまた意味合いが変わってきます。なぜなら勝がこの後とる行動は劇中のえんとつそうじの行動そのものですから。実は7巻という序盤において最終43巻での展開が暗示されていたという壮大な伏線だったんですよ…

さて鳴海に代わって宇宙へ上ると言う勝、当然納得できない鳴海。
鳴海「…地上でオレが何をしてろってんだ⁉︎今までオレはゾナハ病を止めるために戦ってきたんだぜ!」
「伝言を預かってる…おまえに命を救われたフランスの女教師だと言ってた。「今度はあなたがきっと助かって」。」
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鳴海「オレが…幸せにできるヤツ…?」
「おまえのリクツだと…人間は誰一人幸せになんてなれない…」
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勝だからこそ言えた、他の大人では言えない言葉です。やっぱ人間というものは成長すればするほど過去に縛られていく生き物なんですよ。何にも縛られない自由な子供だからこそ出てくる発想なのかもしれませんね…


さて一方、しろがねも最後の戦いへと赴きます。
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しろがねの中では鳴海は宇宙へ旅立ってもう戻っては来ないですからね、愛する人に二度と会えることのない世の中ってのはやはり空虚なものなのかねぇ…

そんなわけでしろがねもラストバトル突入。
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しろがねのラストバトルの対戦相手はハーレクイン。こいつがまた強いんだわ…

ちなみにしろがねが助けたこの赤ん坊は…
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ここでドミートリィの名前が出てくるか…懐かしいというか、からくりサーカス初見の読者はもうこの名前を忘れちゃってますよね…

さてここからは神父さん目線で語られます。
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とはいえもう満身創痍のしろがね…
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藤田和日郎もこの辺りは描いててノリノリだったでしょうな。この機械仕掛けの神編第86幕「抱擁」は漫画誌に残る1話です。

がしかし目の見えない鳴海。
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パンタローネ様が無駄死にではなかったというのが心熱くさせてくれますね…

そしてここからはもはや説明不要、黙って読みましょう。
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藤田和日郎、やはり天才。からくりサーカスは43巻もあって読むにはなかなかに疲れるところもありますが、全てはこのシーンのためだったと考えると疲れも吹っ飛びます。逆に43巻もあったからこそこのシーンが引き立つのかもな…

そしてこの次話「宇宙ステーションへ」も素晴らしい話なんです。もう黙って読みましょう。
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エレオノール「な…なみだ…」
鳴海「あ!ど…どうしたんだ、しろがね?お…おまえが泣くなんていったいよ!」
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フランシーヌ人形の「べろべろばあ」があまりにも鮮烈過ぎたというのはありますが、からくりサーカス全編を通じてテーマであった「女性の笑顔」ここに完成といったところでしょうか。いつも笑顔を絶やさなかったフランシーヌから始まったこの物語は、エリ公女やリーゼさん、ルシール婆ちゃん、アンジェリーナ、フランシーヌ人形といった笑顔を忘れてしまった女性たちの笑顔を経て、最後にこのエレオノールの笑顔に辿り着いたんですね…

そしてこのエレオノールの笑顔を見ていたのがこの2人。
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たまりませんね。パンタローネ様のこの表情、これは藤田和日郎じゃなきゃ描けません。うしとらの頃からそうなんですが、登場人物の死に際を描かせりゃ藤田和日郎は天下一です。からくりサーカスも登場人物の大半が死亡する物語ですが、印象的な死にっぷりがいくつもありましたもんね…

さてその頃宇宙に飛び立った勝を狙うのは地上に残った最後の自動人形。{10AD52E3-6218-4577-AB04-E2D228F4A8A5}ピンボール-「K」!
このからくりサーカスには敵役として自動人形が山ほど登場しました。その中でも俺のお気に入りはシルベストリとサプライズ・ピーシューターでしょうかね。まぁサプライズ・ピューシューターに関してはほとんどの読者が覚えちゃいないでしょうけども。

そんなピンボール-「K」を破壊し勝を救ったのはもちろんこの人。
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阿紫花さんもここで退場か…主役級の勝・鳴海・しろがねを除くと唯一人第1巻から登場し続けている人物ですからね。ギイやルシール婆ちゃんよりも長く登場し続けてるとなると、自然と情が移っちゃいますよ…

そんなこんなで勝は宇宙ステーションに到着。そこにいたのは元の姿を取り戻した白金と…
{7E85558E-FE30-433C-AA7A-D4FD671943E4}自分の惚れた女にそっくりな人形に囲まれたとして、そこに愛はあるんでしょうか。俺は愛が生まれると思いますよ、人は見た目が全てではないけども、惚れた女と全く同じ外見をされちゃあ気にならんわけがないもんなぁ…

さてこの両者の戦いの中、白金から勝にこの質問。
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惚れた女を他の男に譲る、この気持ちが理解できない男は世の中結構いるのかもしれません。そこだけは譲っちゃダメだというのもまた男の真理の一つではありますからね…

さてこれに対する勝の回答は…
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恋愛は早い者勝ちというわけではありませんから横恋慕というものも基本的にはアリですし、むしろ本当に好きならば人から奪いにいくものなのかもしれません。がしかし知り合いの想い人に手を出すという行為までもが正当化されるかというとそれはやはり疑問ですわな…

さてこの勝の答えを笑うフェイスレス。
フェイスレス「あはは、バカだなァおまえは!そんなのぜんぜんカンケーないね!好きなら他のヤツなんてカンケーないさ。さらっちまやぁよかったんだ!」
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世の中の雰囲気として「我慢」という言葉の持つ価値が徐々に薄れてきているように感じますな。昔は我慢こそ美徳という空気はありましたが、今は自分のやりたいように生きてナンボという風潮ですもんね…

つーわけでまだまだ折れないフェイスレス。
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間違いではないと思います。誰もが思っている事だと思います。だけどそれを言葉に出す人がほとんどいないというだけのことですよね…

さてここで乱入してきたのはディアマンティーナ。
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当たり前のことなんだけども、こんな簡単な事が分からない奴らが男女問わずストーカー化していくんですな。自分が愛したんだから人からも愛してもらえる、そんな自分勝手な考え方しかできないのは今の奴らが子供の頃から甘やかされて育ってるからかなぁ…


中編に続く。

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