第314話「ブラック・ジャイアント伝説」
舞台はまずここから。
カイロ!
エジプト最大の都市であるのはもちろんのこと、アラブ圏最大の都市でもあり、アフリカ大陸最大の都市でもあるのがカイロですな。約1,800万人が暮らすカイロはその人口規模は世界でもTOP10に入りますが、観光力や経済力を加味すると世界でもTOP50に入れるかどうか怪しくなってしまいます。観光に行くにはまだ少し治安の不安が残るからねぇ…
そしてこの人の話が。
これはイランのモハンマド・レザー・シャー国王、いわゆるパフラヴィー2世のことですな。ここでは少しイランの歴史について振り返っておきましょう。
そもそも歴史において「イラン」と「ペルシア」はまぁ同じ意味で考えてよいかと思います。世界史専攻なら馴染みのアケメネス朝ペルシアに始まりセレウコス朝、アルケサス朝からのササン朝、ウマイヤ朝、アッバーズ朝、サーマン朝、ブワイフ朝、セルジューク朝からのティムール帝国、サファヴィー朝を経てパフレヴィー朝というのが1925年に成立し、ここで「イラン」を正式に名乗ります。その第2代国王であるパフラヴィー2世は「白色革命」というイスラム教圏では珍しい改革を断行するんです。これはもうとにかく西欧化を進める政策でして、アメリカもその頃はイランを猛プッシュしていたわけです。がしかーし。女性参政権や一夫一妻制というイスラム世界ではなかなか認めにくい仕組みの導入や貧富の差が増大したことにより、有名なホメイニ師によるイラン革命が発生。パフラヴィー2世はエジプトへ亡命し、ホメイニ師が率いるイランは欧米化への反動からイスラム原理主義を唱えるガチガチのイスラム国家へと逆戻り。アメリカにとって最大の友好国であったイランは途端に最大の反米国家へと変わったのでした…
というのが世界史においても非常に重要なイラン革命です。ここは覚えておかないと中東問題が理解できなくなりますからね…
そしてこの展開へ。
続いては中東戦争を考えなくてはいけませんね…
まず1948年、ユダヤ人がイスラエルの韓国を宣言します。これが気に入らないイラク・エジプト・ヨルダン・レバノン・シリアは即座にイスラエルに戦争をふっかけますが、イスラエルが反撃して事実上勝利したのが「第一次中東戦争」ここでイスラエルがパレスチナを占領したことにより「パレスチナ難民」という言葉が生まれたわけですな。
さらに1956年。エジプトが気に入らないイギリスとフランスはイスラエルを誘ってエジプトに進行。国際世論の非難もあり撤退することに終わりますが、これが「第二次中東戦争」。
そして1967年。イスラエルがエジプト・シリア・ヨルダンの3国相手に戦争をふっかけ、たった6日間で大勝利。これが「第三次中東戦争」。
そして1973年。今度はエジプトとシリアがイスラエルに喧嘩をふっかけます。ここでもイスラエルは奮闘しますが、周辺アラブ諸国の介入でオイルショックが発生。日本でも大騒ぎになったのが「第四次中東戦争」なわけです。
一応中東戦争はこの四次で集結するわけですが、紛争の種は全く解決してないんですよね…
そして今回の主題は「油田」。
ブラックジャイアントとは実際に存在する東テキサス油田のことを指します。アメリカは原油埋蔵量世界9位、石油産出量なら中東勢を抑え世界No.1の石油大国でもあります。何でもかんでもアメリカは1位なんだよなぁ…
そんな石油業界に切り込みます。
かつて世界の石油情勢を支配していたのは国際石油資本、いわゆる石油メジャーだったわけです。がしかしここでOPECが誕生し、石油産業を欧米が独占する時代は終わり、逆に石油価格は中東が決定するという時代に入ったわけです。まぁこの構造は正直怖いですけどね、少しバランスが狂うと第三次世界大戦の引き金にならないとも限らないんだよね…
そんなこんなで舞台はアメリカ最大の原油産出地へ。
テキサス州!
我々のイメージはテキサス=カウボーイ=テリーマンで終わりなんですが、実は全くそうではない。テキサスは全米2位の面積、全米2位の人口を誇るだけでなく、ヒューストン・サンアントニオ・ダラスといった100万都市を抱え州の総生産も全米第2位。テキサス州単体の経済規模はカナダやインド並であり、テキサス州以上の経済規模を誇る都市はカリフォルニア州・東京の2つだけ。もう独立国家として考えても良いレベルの州がテキサスなんです。我々の世代にはテリーマンの印象が強すぎてただの田舎に感じてしまうんですよね…
そんなわけで油田に攻め込むゲリラ、迎え撃つゴルゴ。
カッコいいんですよね、カールグスタフ。
要はバズーカを撃つと反動がハンパないため、弾を前方に発射すると同時に後方にも発射することによって反動を軽減した兵器、それが無反動砲です。ただカールグスタフも現在の戦車を破壊するにはさすがに威力不足となってきており、最新兵器にその役割を譲りつつあるそうですがね…
第315話「メデジン・カルテル」
舞台はこちら。
メデジン、あまり聞いたことない都市ですが、首都ボゴタ・メデジン・カリがコロンビアの三大都市だそーです。メデジンの人口は256万人、規模でいうと愛知県くらいの人口を抱えた都市ですからね、相当デカいです。まぁ人口密度も相当なもんだろうけどな…
そして今回のゴルゴのターゲットはこの人。
エステバロ、このモデルはもちろんこの人なんでしょう。
パブロ・エスコバル!
今回の章題にもなっているメデジン・カルテルという犯罪組織を創設し、アメリカやコロンビア政府と抗争を繰り広げた大物犯罪者ですな。ヒトラーとかとは違い、純粋に犯罪行為で名前を残したというのもまたある意味凄いけどな…
そしてコロンビアといえば当然これの話です。
コロンビアでコカイン以外の話題が出てきたことなんてあったでしょうかね?
コカインは鼻から吸引するんですね。鼻から粉なんて吸ったらくしゃみしちゃいそうなもんですけどな。
そんなわけでエステバロの情婦とまぐわるゴルゴ。ここは数あるゴルゴのベッドシーンの中でも最高のシーンです。
ぶははっ😆
ゴルゴが抱いた女の中で1、2を争うインパクトを残したのがこのリヴェラでしょう。行為の最中に「お、男だよっ あんたは男だよ〜っ‼︎」だけでも面白いのに「煮えてるよ〜っ‼︎煮えたぎってる‼︎」はゴルゴ13史上屈指の名言です(笑)
ちなみにゴルゴ13における女性で最も面白いランキング1位の座を長らく保持していたのはこの人。
最初期の話である第9話「南仏海岸」で登場したこの女性の「雨のサントロペ‼︎恋のサントロペ‼︎」をついに更新したリヴェラの「煮えてるよ〜っ‼︎煮えたぎってる‼︎」は我々ゴルゴフリークの心に深く刻まれましたw
とゆーわけで面白かったメデジンカルテル…とはなりません。この話はゴルゴ史上屈指の名作なんです。それは「煮えてるよ〜っ‼︎煮えたぎってる‼︎」が出たからではなく、この後の狙撃が超絶だからなんです。
残り弾丸は1発、ビルの屋上に追い詰められたゴルゴの選択肢は…
ゴルゴの狙撃歴史の中でも屈指の狙撃でしょう。ちなみに私はこれがNo.1だと思っています。跳弾での狙撃などは条件さえ同じに整えればまだ再現可能性があるけども、この狙撃を再現しろと言ってできる人はいない。落下しながらというあり得ない状況にありながら確実にターゲットを捉えたこの狙撃を、私はゴルゴ史上No.1スナイプだと勝手に認定します。
とはいえブリーフ一丁では当然地上に激突して即死。さてさてどーするのゴルゴ?
体全体で水の抵抗を受けるというのはまぁ分かる。分かるんですけど「水面に当たる瞬間に一気に体を開く」というのがよく分からんな。それなら最初から身体を開いていても同じじゃね?
ラストは第316話「カオスの帝国」この大学に勤めるジョゼフソン准教授がキーパーソン。
UCLA!
UCLAという大学を知らなくとも、UCLAというアルファベット4文字は見たことある日本人が多いでしょう。昭和のある時期に流行ったんですよね、UCLAのTシャツやスカジャンが。今となってはアメリカの大学の服を着てる日本人を見ると「意味分かって着てんの?」と思ってしまいますけどね…
さてそんなジョゼフソン准教授の専攻は「カオス理論」。
でカオス理論って何?と問われると難しいですよね。ニュートンから始まる物理学によれば、最初の状態さえ分かればその後のあらゆる状態の変化が予測できるという考えだったはず。まさに物理学といった感じですが、これに対し「最初の僅かな違いが後々大きな違いとなってしまうため、結果として混沌とした未来になる」というのがカオス理論でしょうか。まぁこんな理論を説明しようと考える方が無駄な時間ですな…
そんなわけで今回はアメリカにおける暴動の歴史。
ワッツ暴動というのは1965年にロサンゼルスで起きた暴動で、死者34人、逮捕者4000名という規模の暴動です。やっぱアメリカは何するにしても規模がデケぇ…
そんな中、銃規制に立ち上がるのがこの人。
エドワード・ケネディですな。まぁ兄が偉大すぎだというのもあるけども、兄2人が暗殺されるというのは数奇な人生だよなぁ…
そして1981年、レーガン大統領暗殺未遂事件が発生。
レーガン大統領暗殺未遂事件自体はノンフィクションですが、その際ブレイディ報道官は死亡したわけではないのです。がしかしここではゴルゴにより射殺されたということになっていますな。まぁこの事件にはジョン・ヒンクリーという明確な犯人がいますので、ゴルゴがやったとすると歴史改変になってしまうからな…
そんなこんなで1984年。
1984年大統領選挙は、民主党が初の女性副大統領候補ジェラルディン・フェラーロを擁立してたものの、レーガンに敗れたという選挙です。まぁこのフェラーロという人も、カトリックでありながら中絶容認派ということで相当叩かれたそうです。アメリカ人はこの辺りが無駄にうるさいんだよなぁ…
さてジョゼフソン女史はこんな事件も裏で糸を引いていた
1991年のロドニーキング暴行事件ですな。この事件の何が凄かったかというと、この時代にそれをたまたま撮影していた人がいたということです。今の世の中とは違いますからね、ビデオカメラなんてまず一般家庭にはない時代ですよ…
さらにこの後1993年に制定されたブレイディ法というのがアメリカにおける初の銃規制法なんですが…2004年にあえなく失効しています。そして現在、アメリカにおいて銃を規制する法律は存在していません(州ごとの規制ならあるけど)。なぜここまで銃規制が進まないのか?まぁ憲法で保障されているからとか、全米ライフル協会の影響があるとか、アメリカ人のアイデンティティだからなんて意見もありますが、結局は減らない銃犯罪に対して市民が対抗するためには銃に頼るしかないからでしょうな…
そんなこんなでこのキング暴行事件から発生してしまったのがこれ。
ロス暴動!
1992年に起こったロス暴動、当時中学生でしたが「アメリカ怖ぇなぁ」とシンプルに感じたのを覚えています。
…ちょっと動画も貼っときますか。
当時これ見て「アメリカには夢がある」なんて思えなかったもんなぁ…
そして公民権運動の当日。
マーティン・ルーサー・キングの「I have a dream」からの公民権法制定、さらにノーベル平和賞受賞は20世紀における人類の大きな分岐点であるようにも思えます。日本人の感覚からするとなかなかピンとこないところですが、アメリカの歴史、黒人の歴史という観点から見ると歴史的快挙であることには間違いない。
結局のところ、アメリカ合衆国に深く根を張る「人権問題」というものは幾多の試練を乗り越えつつもなかなか全面撤廃には至らないということです。これは何故か?要するに元々差別する側支配する側であった白人には、頑張って差別をなくそうというやる気がそもそも無いからなんだろなw